#35 OTOGIKI LAB. 第23話「コンビニに超爆音が流れてたら、どうやって店員さんと『会話』する?」※ポッドキャスト文字起こし

ゲスト:認定NPO法人Silent Voice 代表理事 尾中 友哉

パーソナリティ:川田一輝

※敬称略


音声はこちら


尾中:そん時、広告代理店就職、最初の就職してね、もう人生悩んでる時じゃないですか。そこにフタが開いたんすよ。

川田:ほう。

尾中:自分って、何で手話できんのやろとか。

川田:はあ。

尾中:今までこう、現在から未来しか考えてないわけですよ。高校受験や、大学受験や、こんな会社入りたい、みたいな。目標から自分の行動決めるだけやったんですけど、初めて過去から現在の、

川田:振り返って。

尾中:振り返って。で、それ分かった上で未来見たら、どんな生き方できるんやろって。

川田:はあー。自分が歩んできたこう、助走を見て、

尾中:そうなんですよ。

川田:こっちに自分は飛んでいくんやっていう、なんか未来が見えたんですね。

尾中:初めてそういう考え方をして。

川田:へえー。

尾中:で、おじいちゃん、おばあちゃんとかに最初に聞きましたよね。僕ってどんな赤ん坊やった、赤ちゃんやった?みたいな。

川田:うん。

尾中:そしたら、もう0歳9ヶ月ぐらいの時に、「あなたは泣かなくなりました」みたいなこと言われて。

川田:へえー。

尾中:親が気付かないことに気付いて、舌出して指差してました、みたいな。

川田:はあー、すごい。

尾中:それが友哉の初めて覚えた言葉ちゃう?みたいな。

川田:へえー。すごい。いや確かにそうですよね。泣き声で気付いてもらえなかったら、自ずとコミュニケーションはこう、打ち出す、考えるもんなんですね。

尾中:生存本能っすよね。

川田:な、すごい。

尾中:それが、自分のことなんですけど、初めて知ったんで、面白いって思っちゃったんすよ。

川田:うーん。

尾中:それなんか、ちょっと変でおもろいやん、みたいな。

川田:ふんふんふんふん。

尾中:だから言えることとかできることあるんちゃう、みたいな。

川田:はあー。自分の持っている、一番のこう、武器かもしれないというか。

尾中:そういう風に感じたタイミングでしたね。

川田:へえー。

尾中:そう。

川田:でもそこから、急にね、その広告代理店から、このサイレントボイスっていうのを、多分いろんな葛藤があったと思うんですよ。うん。そんですぐ行けたんですか?

尾中:ああ、ま、そうですよね。川田さんはもう就職せずにフリーやったって仰ってましたもんね。

川田:そう、さっきね、僕がずっと学生時代音楽をやって、歌やってたんで、声を使って人に喜んでもらう仕事がいいなと思って、それこそこの、ABCも受けたんですよ。

尾中:おおー。

川田:関西のね、4局あるうちのABCだけがね、エントリーシートで落ちました。

(二人笑い)

川田:だから、今日ここにABCのスタジオ来てるのはある意味復讐ですね。

尾中:人生の。エントリーシートで落ちた時、なんか言いたくなりますよね。

川田:そうそうそうそう。いやもうちょっと見てから言うて、って。なんなん、備考欄に「ABCの目の前の川でウナギ釣れる」っていう特技書いたからかな、とか。

尾中:ちなみに僕も落ちました。

川田:落ちました?あ、そう、受けたんですね。

尾中:受けた、受けた。

川田:じゃあ我々も帰りなんか壁に落書きして帰りましょうか。「参上」って書きましょう。

(二人笑い)

尾中:「D」書きましょう。

川田:うん。

尾中:ABCD。

川田:ABC、ABCの、D書いて、我々がDだって。

尾中:Dの血を。

川田:受け継ぐものだって。ね、ま、こんな感じで同級生というか、年近い人集まると、OTOGIKI.LAB(音聞ラボ)も初めてのテイストになるんですね。

尾中:ああ、いつもは違うんですね。

川田:いつもはね、本当になんかこう、夜しっとり聴きたいラジオって感じですね。

尾中:ああー。

川田:今ちょっと僕汗ばんでますもん。楽しくて。

尾中:初夏やしね。

川田:初夏ですしね。

尾中:はい。

川田:いやでもそこからね、そのサイレントボイスを立ち上げるってなった時のなんかこう思い出というか、印象はありますか?そんな簡単にいきましたか?

尾中:そうですよね。最初、起業なんて思ってないわけですよ。

川田:うん。

尾中:もうそういう自分の、過去に気付いて、現在に気付いて、

川田:うん。

尾中:で、転職なんですよ、やっぱ最初僕が考えたのは。

川田:ほうほう。

尾中:そしたら、ま、聴覚障害者協会とかね、全国にありますし、

川田:うん。

尾中:で、まだやっぱこう、聞こえない人の領域で、いわゆるこう、何々協会って、ちょっと公的なところに紐づいてるわけですよね。

川田:はい。

尾中:民間のプレイヤーって、そんなになかった時代。

川田:ふんふん。

尾中:で、じゃあ僕協会に入るのかなって、こう考えた時に、やっぱり健常者、ま、この国は特にその制度設計上は健常者と障害者って明確に区分されてるわけですよね。

川田:うーん.

尾中:で、障害者手帳があって、障害者手帳があるから受けられるサービスがあって、こういう体制の中で協会は活動しているわけですよね。

川田:はい。

尾中:で、僕が表現したいことって何やろっていう問いが生まれて、僕は聞こえる人と聞こえない人が、こうずっと家族の中で、何て言うんですかね、こう健常者、障害者っていう、なんかこう、別にそれが優劣を表しているわけじゃ、本質的ではないと思うんですけど、何て言うんかな、健常者は障害者助けるべきで、

川田:ああ、できる人・できない人、みたいなイメージ。

尾中:そう、そう、そう、そう、そう、そう。っていうのを、僕はもう、そのフレームワークで生きてなかったんすよね。

川田:うーん。

尾中:ね、そう思った時に聞こえる人と聞こえない人の共同価値を表現してる主体っていうのが、ないって感じたんですよ、その時。

川田:ああ、そっか。協会ってなっても、やっぱりこう別々の人として、やっぱ扱ってるっていう、そこには大きい区別があったんですね。

尾中:聞こえない人の生活を助ける、手話通訳者を養成するとか、

川田:うん。

尾中:なんかそういう事業を回していく、とか。

川田:うん.

尾中:ってなってたんですけど、僕はやっぱこう聞こえる人と聞こえない人で、力合わせたら何できるんやろな。当時知ってたのは、あの、チャップリンですよね。

川田:ああ、無声映画。

尾中:そうですね。

川田:はい。

尾中:チャップリンの、知ってたのはでかかったっすよね。だから、音がない映画の時代に、こう画面に映ってることが全てなわけじゃないですか。

川田:うん。

尾中:自分の演技指導に、ろう者つけてるんですよね。

川田:へえー!あ、そうなんですか。へえー、チャップリン。

尾中:それって、チャップリンって、聞こえない人って何か失った人って捉えてるんじゃなくて、

川田:うん。

尾中:また違う領域を持ってるとか、

川田:うーん。

尾中:そういう風に捉えてる証拠やと思うんですよね。

川田:はいはいはいはい。

尾中:だからこう自分につけて、感覚の異なりを活かそうとしたわけですよね。

川田:マイナスをゼロに戻すんじゃなくて、これをよりプラスにするために助けてもらってた、と。

尾中:その一つのモノサシっていう考えでもないはずなんんですよ。違うモノサシで人のこと見たってことやと思うんですよ。

川田:へえー。

尾中:それがめっちゃおもろいなと思って。そういうことやってみたいなと思って。

川田:うーん。それが20代。

尾中:23とか4とかですかね、考えたのは。

川田:へえー。そのサイレントボイスのホームページを今日も拝見してたんですけど、なんか僕が思ってたホームページじゃなかったんですよ。サイレントボイスっていうのは、先ほど仰ったみたいな、我々はこういったマイナスをゼロにできますよ、とか、こういった仲間がいますよ、っていうページかなと思ったら、なんかプロジェクトっていう一覧が出てきて。

尾中:うん

川田:とんでもなくぶっ飛んだプロジェクトが並んでたんですよね。僕ちょっとそん中から1つ、一番気になんの聞いてもいいですか?

尾中:どうぞ。

川田:爆音コンビニ「デフマート」ってなんですか?

川田:爆音コンビニ。なんですか、暴走族みたいな名前の。

尾中:何言ってるんですか、そんなんあるわけないじゃないですか。

川田:いやいやいや、あれ僕、気のせいなんですかね?僕が間違えて見てしまったのかな。爆音コンビニ「デフマート」。

尾中:何言ってるんですか、川田さん。爆音コンビニなんすか、それ。

川田:本当ですか?いや、今、今もホームページ見てるんですけどね。デフと聴者の「できる」を増やすっていうホームページから、2回くらいスクロールしたら出てくるこれ何ですか?

尾中:爆音コンビニ、やりました。

川田:はい。

尾中:これは、あの、東京の方にコンビニセットみたいなんがあるんですよ、撮影ができる。

川田:ほう。

尾中:で、そこをお借りして、えっと、音もね、この爆音でかけてた音もね、あの、作りました。なんか音の密度。

川田:ふんふん。

尾中:こう僕とかが歌ったら、低音域がすごい、なんか音があるわけですよね。高音域が少ないかもしれない。でも、高音域と低音域混ぜたら、すごい密度の高い

川田:はい。

尾中:音が作れるっていうことが分かって。そしたら、こうやって話してると、どっか重なる音が出ちゃって、

川田:うん。

尾中:聞き取りづらくなるわけですね。

川田:はい。

尾中:で、もう色々、もうWHOとかの基準調べて、その爆音を聴ける、耐えられる時間っていうのが目安があるんで、

川田:うん。

尾中:で、その時間のなかで、コンビニで、えっと、紙渡して、例えばお買い物リストみたいなんがあるわけですよ。

川田:うん。

尾中:肉まん買って、からしをつける、とかね。

川田:ほう。

尾中:で、こう聞こえる人がそれで買い物ミッションを持ってやってくるわけですね。

川田:うん。

尾中:で、ぐるーっと買い物して、最後こうレジのところに行くんですけど、もう声での会話ができないんで、肉まんにからしつけられないわけですよ。

川田:うわ。はあー。「からしつけますか?」みたいなコミュニケーションがもう言葉じゃできないんですか?

尾中:できないから、いつもの伝え方から離れた瞬間に、どうやって伝えたらいいか分からなかったり、

川田:うわ、今言われてみたら、「この肉まんにからしつけてください」って言葉以外で伝えんの、僕できないかも。

尾中:難しいっすよね。

川田:はい。

尾中:で、それを何でやったかっていう、こともちょっと合わせて説明する必要があるんですけど、えっと、コロナ禍がありましたね。

川田:うん、ありました。

尾中:ありましたね。で、あん時にね、あの、マスク社会やったでしょ?

川田:はい、そうですね。

尾中:で、マスク社会になって、それでも僕と川田さんって多分喋れると思うんですよね。

川田:はい、そうですね。こう口覆ってても、言葉理解できますからね。

尾中:そうですよね。で、こと聞こえない、聞こえにくい人たちの職場や学校現場では、じゃあマスク社会ってどういう変化が起きたかっていうと、今までなんとか、音はあんまり聞こえてないけど、口の形見て何言ってるか理解してる、とか。

川田:はあー、なるほど。読唇術。

尾中:そうですね。で、私たちのこう、領域の言葉で言うと口話教育とかね、口話法って言うんですよね。口で話すっていう。

川田:ほうほう、口。

尾中:ま、それがマスクによって被さった時に、1個僕がやっぱすごく動く動機になったのは、学校行けなくなったっていう聞こえない子がいたんですよ。

川田:うーん。

尾中:で、なんでって聞いたら、「無視すんな」って言って急に肩掴まれたと。

川田:はあ。

尾中:で、その子は学校に次の日行って、マスクしてる人をこう、ばーっと見るわけですよ。

川田:はい。

尾中:誰が喋ってるか分からん、怖、ってなるんですよね。

川田:ああ、だからもう、口元っていうもう唯一のヒントだったのにそれが、見えなくなって。

尾中:そうなんです。だからそれで会社で働けるかなとか、学校行けるかなっていう不安が生まれたっていう、これが、すごいこうある種、聞こえない、聞こえにくい人の身体性のなかの気づきとして、まだ生まれた段階。

川田:うーん。

尾中:で、聞こえる人って、そこと絶妙に想像力届かない部分に、

川田:そうですね。

尾中:あると思うんすよね。じゃ、それをじゃあ、コミュニケーションとって、理解してもらおうって考えた時に、「じゃあ尾中友哉が講演会やります、マスクで今こんなことが起きてます」とか言っても、知ってる人、興味がある人しかアプローチできないってことに気づいたんですよ。

川田:うーん、もう一部の人にしか、届かないんですね。

尾中:そうなんです。じゃあこれは、何かエンターテインメント性っていうのを拝借して、

川田:うん。

尾中:やらなきゃいけない、っていうのがこの爆音コンビニっていう、ま、何やろっていうネーミングですし、

川田:へえー。

尾中:コンビニのなかの店員さん、マスクしてもらったんですよね。

川田:ふんふん。

尾中:で、声でコミュニケーションできないじゃないですか。最後レジ行って、いくらか聞きたいわけじゃないですか、お財布開いてね。

川田:はい。

尾中:わからへん。

川田:わからへん。口元隠されてこう聞こえなかったら、え、1000円、いやこれだいたい2000円ぐらいやと思うけど、多めに出そうか、みたいになっちゃうかも。

尾中:そうですよね。

川田:はい。

尾中:だからこう、聞こえない人の、このマスク社会における感覚、みたいなのに、どうやって人々が積極的に、なんかこうそれを知ったり気づいたりするか、っていう、ことをちょっとやってみたっていう。

川田:へえー。

尾中:それで色々ね、やっぱあの、ちょっと変なことであるんで、

川田:うん。

尾中:当時ニュースにしていただいて。で、その裏側で僕らはあの透明マスクね。

川田:ふんふん。

尾中:を配布してたんですけど、もうそれをたくさんね、学校現場、教育現場、医療現場にもね、

川田:そっか、透明マスクで口元が見えるマスク。

尾中:そうですね。デフの方でもこう口が、口話ができるという。

川田:へえー。いや、これはなんかすごい、前回仰ってた、あの、原体験、団子屋さんでそのデフの方、耳が聞こえない方が、こう注文すごく困ってたのを助けたっていう、ま、助けたって言うんですかね、通訳をしたっていう体験、そこがなんかきっかけになってっていうとこにも繋がるし、もしかしたらこの広告代理店にいたっていう経験も活きてるんじゃないですか。

尾中:おお、そうかもしれないですね。今思ったらね。そうなんですよね、なんか広告代理店入った理由も、なんか面白いとか美しい、みたいな

川田:うん。

尾中:ことが、なんかその人のアクションを引き出すわけじゃないですか。

川田:はい。

尾中:なんかそれにすごい魅力を感じてたんで、確かにこれは爆音コンビニと同じ構図ですね。

川田:そうですよね。多分、正しいことを正しくやっても、仰る通り伝わる人って、それに興味ある人っていう、一部になってしまいますもんね。

尾中:それはね、すごい意識してて。

川田:うん。

尾中:やっぱりこう、なんやろ、困ってる人ってやっぱいるし、ま、環境的にね、それが生じてるんですけど、その問題をやっぱこう紙に書いて渡しても、興味持って読む人ってあんまいないっすよね。

川田:はい。

尾中:だからなんか本当に伝えたいことは、結構ブラックボックス的に隠しちゃって、

川田:うーーん、なるほど。

尾中:で、そのパッケージは爆音コンビニで。

川田:みんなが「なんやなんや」ってこう寄ってくる。

尾中:そうそう、そうそう。

川田:「おもろそうやぞ」って。

尾中:で、帰り道、読後感のなかに、聞こえない人がマスクで困ってるっていうのが、「いやそうやんな、そらそうやんな」って思える何かが残ってたら… (つづく)

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